自分でごきげんになるためのテクニックと習慣とは?
禅僧と応用神経科学者が語る「ウェルビーイングな生き方」

お知らせ | 2021-12-10

InTripのコンセプトは「禅の教えで、ごきげんな毎日を」。
環境や日々の出来事に振り回されるのではなく、自分の心を自分でととのえられる人を増やしたい。その思いから、禅のアプローチで、ごきげんになれる「種」に気づき、味わい、物事の良い側面にフォーカスする思考を育んでいく。

では脳科学の視点から見ると、「ごきげんであること」「ごきげんをつくること」はどういうことなのか。InTripのブレーンでもある応用神経科学者の青砥瑞人さんと、代表取締役僧侶・伊藤東凌が語らった。

なぜ今「ごきげん」がキーワードなのか。

ーーInTripのコンセプトを「禅の教えで、ごきげんな毎日を」とした背景を教えていただけますか。「ごきげん」って、禅に漂う静謐なムードと比べ、ずいぶん庶民的なワードに聞こえるのですが…。

伊藤東凌 (以下東凌)
私は常々、ごきげんは「自分が身近な人にできる一番のプレゼント」だと思ってきました。ごきげんでいることは、自分が幸せなだけでなく、周りの人にもとても良い影響を与えますよね。
ごきげん、確かにカジュアルな言葉ですが、InTripを通じてみなさんに実現してほしいことは何なのか、突き詰めていった先にあった真理のようなものに近いコンセプトだと私は思っています。

気分の良し悪しは、周りの環境に依存している部分が大きいと思います。天気が悪くて気分が下がるとか、人から何か指摘されて落ち込むとか。絶対にごきげんでいられる環境をととのえ続けるなんて、不可能に近いことですよね。

しかし、物事は、自分の捉え方次第です。まわりの状況や人との関わりを、どう捉えるかでその日の充実感や幸せが決まります。難しいとことのように思われますけど、自分の思い込みや執着を手放して、捉え方の癖を外すことで、今までネガティブに捉えていたものを、「勉強になった」などとポジティブに変えられるんです。ごきげんな状態とは、物事の良い面を捉えられる自分がいるということです。

ーー捉え方はどうやって変えるんでしょうか。

そのためには、実は身近なところにごきげんになれる種がたくさんあるということを、まず知ることが大事です。知れば、そこにアンテナを立てられる。例えば、自分が花を見ることで気分がよくなると知れば、花を見る時間を増やすこともできます。

次に大事なのは、良かった気分を思い出し、繰り返し味わうことです。そうすることで心の持ち方の癖がポジティブなものに少しづつ変わっていきます。つまりごきげんは、能動的に「自分で作っていける」ものだと考えたわけです。

ごきげんになろうとするとき
脳内で起こっていることとは。

ーー「自分でごきげんをつくっていく」。青砥さん、これを脳の視点で見るとどうなりますか?

青砥瑞人さん(以下青砥)
いやあ、驚くほど、脳科学的にもリンクすることが多いですよ。

脳の中の仕組みを説明すると、すごくざっくり3つの構造に分けられるんですね。
1つめが「フィルター」。膨大な情報の中から、自分が処理するものを選び取る、インプットの部分です。
2つめが「リアクション」。取った情報や受けた刺激への、反応です。情動反応はもちろん、思考の反応、行動の反応もあります。これがアウトプットとも言えます。
3つめが「メモリー」。つまり記憶。内側にたまるデータベースです。

ごきげん、ハッピーな気分は、脳的に言うと2つめの「リアクション」。現れては消える無形の反応です。幸せだな、美味しいな、心地いいなというとき、脳の神経細胞が活動し、関連する神経伝達物質(ドーパミンやセロトニンなど)が出ています。ところがこういった反応は、時間と共に平衡状態に戻る仕組みになっている。つまりハッピーな気持ちは一過性のもので、長く続かないものなんです。

どうしたらハッピーな脳になれるのか。鍵を握るのは3つめの「記憶」です。人の脳は、インプットとアウトプットのすべてが記憶になるわけではなく、その中の一部が選ばれて、記憶にまで残っていく。要は、ハッピーをリアクションからメモリーまで持っていければいいんです。

ーーそんなことができるんですか?

できるんですよ。脳は何かにトップダウンで意識を向けられる機能を持っているからです。
意識すれば、フィルターにも、リアクションにも、メモリーにもアクセスできる。
ハッピーという一過性の気分を、心から味わったり、思い出したりすれば、記憶に刻み込むことができます。またその体験を繰り返すことで、脳にパターン学習させることも有効です。東凌さんが言っているアプローチはどんぴしゃですね。

ーー「物事は捉え方次第」という考えは、脳的に正しいと。

そうです。トリックアートの類で、同じ長さの棒なのに片方が長く見えるとか、同じ色なのに片方が明るく見えるとか、そういうのあるじゃないですか。

脳は、あるものをあるように知覚しない。脳がどう反応するかによって知覚する。だから騙されることもあるんです。物の見方というのは内側の反応、つまりその人の捉え方次第だということは脳の仕組みから明らかなんです。

物事のポジティブな側面に意識を向ける練習をすることで、徐々にポジティブに捉えられる脳になっていきます。ネガティブ思考がパターンになっている人は、学習して書き換えていくしかないんですね。有能な経営者でもコーチをつけたりするのは、自分の思考の癖から抜け出すためです。

東凌
面白いですね!仏教にも「顛倒(てんどう・捏造に近い意味)」という言葉があります。人はあるがままのものを見ているんじゃなく、誤認識があるということです。

パターン化した顛倒から離れるには、できるだけ生活や思考をシンプルにして、一番大切なものは何か、一番心震えるものは何か、心の中を探っていくべきとしています。
青砥さんのお話、まるで禅の説法のようですよ(笑)。

書くことも大事だが
もっと大事なのは味わうこと

ーーInTripに、ごきげんを記すメモ機能ができましたよね。どこの夕焼けが綺麗でした、こんな嬉しいことがありました、と。文字に書くことや見直すことも、メモリーを強固にすることにつながるのでしょうか。

青砥
もちろん、頭に思い出すだけじゃなく、人に話したり、日記に書いたり、多角的に機会を増やすことはメモリーを書き込む確率を高めることになります。

東凌
実は禅では伝統的に、書くことから離れなさいという教えもありますが、一般的な感覚としては、俯瞰する意味がありますよね。ジャーナリング。文字にするという外部化によって振り返って気付きを得やすい価値があると思います。

青砥
なぜ禅で書くことをよしとしないのか、僕ちょっと分かる気がします。
言語ってすごく限定的なので、「それが全てではない」と知っていたほうがいいと思っていて。頭の中の世界って、視覚、聴覚、ムードを含めいろいろあって、これを全部言語化するのは難しいので、そういう曖昧さも含めて捉える方がいいかもしれないと。
書くことで情報のストックを取り出しやすくする、トリガーとして使うくらいの感覚でいいと思います。

東凌
まさに。書くこと自体よりも、嬉しかったり幸せだったイメージを、もう一度味わい尽くすことの方が大事です。香りや手触り、空気感などをもう一度「感じる」ことが。なのでInTripでは、記録するだけでなく、その日ごきげんになれた瞬間をじっくり思い出すための、振り返りのコンテンツも用意しているんです。

実は親和性があった
ごきげんとウェルビーイング

ーーところで、「ウェルビーイング」は昨今よく聞くようになったワードですが、ごきげんと親和性がありそうですね。

青砥
本当に、ここ数年でウェルビーイングの文脈で脳の話をしてほしいという依頼が増えました。少し前まではリスクマネジメント、ストレスマネジメントの話の依頼が多かったのが、今は心の豊かさに関心が向いているのを感じます。新たな人類のステージなのかなという感覚があります。

先ほどの話でいうと、メモリーにハッピーな記憶の痕跡がつくられた状態が「ウェルビーイング」だと言えます。「ビーイング」って存在とか状態を表す言葉ですよね。
ごきげんな状態って、精神的にも、また免疫系を通して身体的にもいい影響を与えてくれます。そして、人と人とのつながりにも。だってごきげんな人って、なんか一緒にいたいと思いますよね。人間はムードやオーラのようなものを感知できる生き物だから、そういう人の周りにはいい人の輪ができやすいんです。ごきげんは人生の豊かさにいろんな角度から影響していると思います。

東凌
本当ですね。自分に起こる出来事は選べないし、毎日は思い通りにいかないことのほうが多い。有名な「日々是好日(にちにちこれこうにち)」という言葉がありますけど、毎日が良い日というのは、自分に都合の良い日という意味ではない。たとえ最悪な条件の1日でさえ、良い日と捉えていく「姿勢」のことです。
これはまさにInTripで実現したい「ごきげん」という世界と結びつくし、捉え方を良く変えていくテクニックと習慣を身に付けられたとき、その状態がすなわちウェルビーイングだと思います。

ーーウェルビーイングに通ずるソリューションが、鎌倉時代からの禅だなんて面白いですね。ちょっと現代の社会に目を向けてみると、今は昔よりも物質的に満たされ豊かになったにも関わらず、逆にストレスが増えてきたように感じるのですが。

東凌
学校でも社会人になっても、これまでは「ないもの探し」をして、そこを埋めていくことをやってきました。今、「ないもの探し」がブーメランで戻ってきて、自分にないものを見つけては追い詰めてしまう人が多いと思います。今この瞬間も、幸せはたくさんあるし、これまでで叶ってきたこともたくさんある。そう気付けるといいですね。

禅では、体の感覚に戻ることで「あるもの」に気付きます。当たり前で見過ごしている、肺が呼吸しているとか、小指が動くとか、物理的なものを通して「ここにある」と知る。ないないと言っていたところから、あるものに目を向けて実感していくことを大事にしています。

青砥
いやー面白い。脳的に言うと、テクノロジーが進歩して、便利なもの、魅力的なものがどんどん増える世の中で、脳は刺激的なものに注意が向けられるようにできています。
朝起きてから、スマホ見てテレビ見て広告見てゲームして…ずっと脳が外の世界に向いて独占されて、自分に向く瞬間がありません。外付けの自分、つまり自分じゃない状態になって、自分の行動原理・思考が外に支配されてしまいます。

内側にある豊かさを感じていくことは、本来何も見なくても、何も持ってなくても、目を閉じるだけでできるんですよね。InTripはスマホの中にありながら、外の世界から自分自身を取り戻すのに役立つツールだと思いますよ。

勘違いでもいい。最悪な1日でも
ごきげんになれる人に。

東凌
ストレスについては、どうでしょう。私は、現代人は「ストレス」という言葉に意味をつけすぎたんだと思うんです。これが先ほど言った「顛倒」なんですけど、昔の人が許容範囲として受け止めていたものを、「ストレス=悪いものだ」と決め付けてしまったから、苦しくなったんじゃないかと。

ストレスをエネルギーに変えるとか、「ストレスもそんなに悪くない」という捉え方もできると思っていて、私は最近、ちょっとストレスを楽しめるようになってきました。10段階の6でも「おお、まだいけるぞ」、8で結構辛くて笑っちゃうような。ストレスに親しんでいる感じですかね。

青砥
まさに!僕が『ハッピーストレス』という本を書いた理由もそこです。ストレスって生き物にとってある程度必要なものなのに、ネガティブな側面ばかりに囚われてしまうから、避けるべきものになってしまっている。

有名な実験で、ストレスは悪いものじゃないというレクチャーを事前に受けた人は、ストレスからの回復が早かったという結果が出ています。
ストレスへの耐性が強いとか回復が早い、そういう力をレジリエンスと言いますよね。捉え方だけでレジリエンスが変わるってことが科学的に立証されているんです。「ストレスって悪くないぜ」、「自分を成長させてくれるものだぜ」って普段から意識していれば、ストレスがかかったときにレジリエンスを発揮できます。

ーーつまり「顛倒」を逆手にとるってことですよね。名前を付けてしまったからストレスになったなら、名前を付け直して親しんでいこうと。

東凌
そのとおりです。私はそういう「諦め」って好きなんですよね。どうせ正しくは認識できないんだから、楽しい方に解釈しようと。

青砥
そうそう。正しく考えて不機嫌な人より、勘違いしてハッピーな方が良くない?って僕も思います。だって、自分の記憶に何を残しておきたいかって、悲しいことや嫌なこと、くだらない誰か噂のとかじゃないですよね。豊かな瞬間瞬間ですよね。

ただ、気をつけないといけないのは、人間はもともと、生存確率を高めるために、自分に危害を加えることに注意を向けるようになっている、太古の時代からの脳機能があります。これを「ネガティビティバイアス」と言うんですが、ネガティブなものが優先して脳に入ってきやすいということを認識して、その餌食にならず、意識的にごきげんに意識をふっていきたいですね。

実際はそんなに難しいことじゃないんです。気持ちいいソファで今日の嬉しかったこと思い出したら、その瞬間幸せになれますよね。どんなに悪いことばかりだったという日でも、何かしら良いこともあるはずなんです。小さな花でも一杯のお茶でも、ささやかな幸せのモーメントに気付けるようになることで、同じ世界に生きてるのに、世界の見え方が変わって、カラフルに見えるようになる。そんなイメージですよね。

東凌
いいですね。さらに、その先に「明日のごきげんを迎えに行く」ようになれれば素晴らしいなと思います。

ごきげんな人が増えるって、自分らしく生きるためにチャレンジできる人が増える、可能性を信じる人が増えることにつながると思うんですね。

そして自分の心をととのえられる人は、人も信頼できるから、人と人との信頼関係も変わっていく。自分が幸せな気分だと、人を幸せな気分にすることも楽しくなるし、挑戦している人の足を引っ張るより助けたくなるじゃないですか。そうやって「ごきげん」が、今よりも明るい社会をつくることにつながると思うんです。ちょっと飛躍しすぎかもしれませんが。

青砥
飛躍じゃなく、ほんとだなと思いますよ!
自分の内面と向き合っていきながら、大きいことができた・できないじゃなく、些細かもしれないけど自分にOKを出せるモーメントが増えることが大事で、それが自己肯定や自信につながると思います。

そういう人は、新しいチャレンジができるし、そのチャレンジはリスクではなく新しい世界との出会いになっていく。失敗してもその中に良いものを見出せるから、表面的な結果がどうあれ、豊かさが増えていくんですね。
悪口を言って足を引っ張り合う社会じゃなく、チャレンジして応援し合う社会。いいですね。僕も理想です!

ーーありがとうございました。自分で自分をごきげんにしていくために、ハッピーな瞬間を思い出し、脳のメモリーと思考パターンを書き換えていく……。禅と脳科学が、見事にシンクロしましたね。「ごきげん」への旅路は、きっと今より豊かな日々になるのだろうとワクワクしました。

※InTripでは、「今日のごきげん」を記録し、思い出し、味わうことができる新機能ができました。みなさんぜひご活用くださいね。

(聞き手・編集:本間美和)

プロフィール

青砥瑞人

青砥瑞人(あおと みずと)氏
株式会社DAncing Einstein Founder CEO

高校中退後、米国UCLA大に留学。神経科学学部を飛び級卒業後、帰国し起業。「ドーパミンが溢れてワクワクが止まらない新しい教育」を目指し、子どもの発育、人材育成の領域でも活躍する。AIを活用したNeuroEdTech®︎とNeuroHRTech®︎という世界初の分野を開拓し、幾つもの特許を取得する脳・神経発明家でもある。著書に『BRAIN DRIVEN』『HAPPY STRESS』『4 Focus』他。

伊藤東凌

伊藤東凌(いとう とうりょう)
両足院 副住職
株式会社InTrip 代表取締役僧侶

臨済宗建仁寺派両足院副住職。1980年生まれ。建仁寺派専門道場にて修行後、15年にわたり両足院にて坐禅指導を担当。アートを中心に領域の壁を超え、現代と伝統を繋ぐ試みを続けている。アメリカFacebook本社での禅セミナーの開催やフランス、ドイツ、デンマークでの禅指導など、インターナショナルな活動も行う。
2020年4月グローバルメディテーションコミュニティ「UnXe 雲是」を設立、7月に禅・瞑想アプリ「InTrip」を立ち上げ、代表取締役僧侶に就任。海外企業のウェルビーイングメンターや国内企業のエグゼクティブコーチも複数担当。
著書『心と頭が軽くなる 週はじめの新習慣 月曜瞑想』(2021年アスコム)をリリース。

禅の教えで心をととのえ、ごきげんな毎日をつくる「InTrip」

InTripは、禅寺として古くから有名な京都「両足院」の副住職、伊藤東凌氏とともに開発した、禅の教えで暮らしにゆとりをつくり、自分と向き合うお手伝いをするアプリです。

まるで京都のお寺にいるような本格的な禅体験を、いつでも、どこでも、手軽に始めて、続けられるのがアプリの特徴。
禅や瞑想が初めての方でも、アプリで東凌さんのガイドに従うだけで、禅を楽しむことができます。

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