Column

コラム

Top/Column/なぜ、新商品の99%は市場から消えるのか ─生き残る商品は何が違うのか日本酒酒器SHUWANの取り組み―

なぜ、新商品の99%は市場から消えるのか ─生き残る商品は何が違うのか日本酒酒器SHUWANの取り組み―

シンクロでは2025年1月、日本酒のための新たな酒器を届ける「酒碗(SHUWAN)」プロジェクトを共創型モデルとしてスタートさせました。
これは従来の「マーケティング支援」や「自社事業」の枠組みを越え、自らもリスクを背負って投資を行い、事業成長に深くコミットする、私たちにとっての“第三の関わり方”を具現化したものです。
本稿では、事業を牽引する原の視点から、この1年半にわたる挑戦と、そこから得られた気づきについて共有させていただきます。

1.新商品は、なぜ99%が消えるのか

私はこれまで20年以上事業側で数多くの新商品に関わってきました。
しかし、どれだけ良いプロダクトをつくっても、市場に残るものはほんの一握りです。
実際、ニールセンの調査によれば、新商品の定番化条件として「発売2年目に初年度売上の90%以上を維持すること」と定義していますが、年間1万件規模の新商品追跡データにおいて、同条件をクリアし定着する商品は全体の1%未満という極めて厳しい現実です。

出典:NielsenIQ Breakthrough Innovation Report

なぜ、こんなに新商品が世の中から消えていくのか。
要因は色々と考えられますが、ブランド側にいた人間として、強く感じているのは、
「顧客不在の差別化」が量産されていることです。

世の中にあるものに機能を足せば売れるのでは
ストーリーを付与すれば伝わるのでは
他社と違えば選ばれるのではないか

そうしたなんとなく自社都合で“正しそうな戦略”の積み重ねが、結果として市場に「似たような商品」を溢れさせています。
そして気づけば、顧客の中に“選ぶ理由”が存在しない商品が増えていく現状があります。

2.シンクロのスタンス:支援か、自社か、その間の共創型モデル

シンクロには、大きく2つの事業があります。ひとつは事業を支援する「マーケティング支援事業」。もうひとつは、自ら事業をつくる「自社事業」。
しかし、そのどちらでもない、“第三の関わり方”があります。
それが、自らリスクを取り、マーケティング投資を行い、事業成長にコミットする「共創型モデル」です。SHUWAN事業は、その象徴的な取り組みです。

3. 酒碗(SHUWAN)とは何か

SHUWANは、単なる日本酒の酒器ではありません。
その背景には、日本酒づくりそのものの変化があります。
2010年頃から、「農業」「伝統」「地域性」に立ち返り、土地の個性を映した酒を醸す蔵が増えてきました。若い蔵人たちが世界に挑戦し、原点回帰の潮流が広がるなかで生まれた現代の日本酒は、味わいも香りも、かつてのものとは大きく変わっています。

酒碗(SHUWAN)

この流れの真ん中にいた庄島健泰さん(福岡・住吉酒販)が抱いたのが、二つの“違和感”でした。

違和感① なぜ、日本酒は「ワイングラス」で飲まれているのか

ワイングラスは、香りを楽しむ日本酒が広がった時代に大切な役割を果たしました。しかし、本来はワイン文化のなかで育まれた器です。

違和感② なぜ、繊細な味わいを引き出す、日本酒のための器が存在しないのか

受け継がれてきたぐい呑みは美しい器ですが、現代の日本酒の繊細で複雑な味わいを、十分に受け止めきれないこともあります。

酒碗(SHUWAN)

この問いから2022年に生まれたのが、「機能性」「芸術性」「文化性」を一つにした新しい酒器カテゴリ「酒碗(SHUWAN)」です。それは、現代の日本酒にふさわしい器を、歴史の延長線上に立ち上げる挑戦でした。
そんな折、庄島さんから「よい商品ができたが、それを世の中に広げる方法を模索している」というご相談をシンクロにいただきました。事業側での経験が長い私から見て、後述する非常にチャレンジングな取り組みだと感じ、2025年1月よりSHUWAN事業に参画させていただきました。

4.新たな文化創造

SHUWANが目指しているのは、日本酒の“飲み方”そのものを再定義することです。日本酒の味を強調するでも、演出するでもなく、その酒がもともと持っていた繊細な魅力を、より自然に、より豊かにひらいていくという考え方です。

酒器はいつの時代も、その時々の酒と人々の営みに応えながら姿を変えてきました。SHUWANが目指しているのは、この歴史の延長線上で、現代の日本酒にふさわしい「飲み方」そのものを定義し直すことです。器を起点に、所作が、体験が、そして価値が変わる。これは単なる新商品ではなく、一つの文化の再解釈だと考えています。

酒碗(SHUWAN)

5.ビジネスとしての難易度

酒器事業は、ビジネスモデルとして難易度が高い領域です。
原価が高い、リピート性が低い、単価も限定的。また日本酒を飲む人も減っており、「マーケティングで伸ばすには不利な条件」が揃っています。

それでも、なぜやるのか。それは「市場の前提そのものを変えられる可能性」があるから。既存市場でのシェア争いではなく、新しいスタンダードをつくる挑戦に関われる。
これは、マーケティングに携わる人間にとって貴重な機会です。

6.シンクロが取り組んできたこと

私がSHUWAN事業に携わったこの1年で一貫して取り組んできたのは、「疑われない状態」をつくることです。

具体的には

1. 酒蔵・料飲店からの評価収集

2.日本酒イベントで、お客様に忖度なしの飲み比べをいただく体験価値の可視化

3.味・香りの違いの機能分析
(味香り戦略研究所と同じ日本酒を3種の酒器で成分比較したエビデンス分析)

4.客観データの蓄積と表現設計(600人の試飲体験動画)

つまり、なんとなく「良さそう」ではなく、「確かに違う」と言える状態をつくることに集中してきました。この客観的な事実に基づくアプローチはAI時代に特に必要なことだと感じています。

酒碗(SHUWAN)

日本酒市場自体は、長期的には縮小しています。しかし一方で、
新しい挑戦をする酒蔵、体験価値に投資する料飲店、日本酒の新しい飲み方に共感する日本酒好きの方々・・・
こうした人たちの“熱量”は、確実に存在しています。

これからも酒器を起点に、日本酒の価値を再編集し、新しいカテゴリを共創する
という挑戦を続けていきます。

7.最後に

これは、SHUWANに限った話ではありません。
マーケティング事業に携わられている方の中で、
もし、

・新しいカテゴリをつくりたい

・プロダクトに確かな価値があると信じている

・しかし、伸ばし方に悩んでいる

のであれば、「支援」や「委託」でない形で、一緒に事業をつくることができるかもしれません。シンクロは、成果にコミットし、自らもリスクを取るマーケティングに取り組んでいます。ご関心があれば、ぜひ一度お問合せください。

日本酒の真価を引き出す碗酒器「SHUWAN」
https://shuwan.jp/

(文・原 浩晃)

contact

シンクロの各事業に関するお問合せ、
取材・講演のご依頼等はこちらから

山と海が見える世界の景色