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なぜマーケティング会社が、国境の島・対馬で宿をはじめたのか。「RITO」事業責任者・武が移住した、その理由

「RITO」事業責任者・武が移住した、その理由

シンクロで、長崎県・対馬での一棟貸し宿事業「RITO」の責任者を務めている、武(たけ)です。

シンクロといえば「マーケティング支援」の会社、というイメージを持たれている方が多いかもしれません。ただ、実は私たちは対馬で自社の宿泊事業も手がけていて、現在2軒の宿を運営し、3軒目の準備を進めています。

なぜ、私たちが国境の島で宿を営むのか。そして、私自身、なぜ家族と共に対馬へ移住したのか。今回はその経緯と、いま私たちが見ている景色についてお話しさせてください。

1. 「観光 × デジタル」が実践できるシンクロへ

私はもともと、熱海の老舗ホテルに20年近くいました。宿泊業や観光業の様々な業務をひと通り経験させてもらって、お客さまの動きも、運営の難しさも、肌で分かるようになりました。

ただ、現場にいればいるほど、「もっとデジタル・マーケティングで観光・宿泊業をより良いものにできるのでは」と思い始めました。リアルな宿泊業のオペレーションを知っている人間が、マーケティングの視点を持って地域に入っていけたら、面白いことができるんじゃないか、そんな思いでシンクロに加わりました。

対馬との最初の出会いは、代表である西井と一緒に訪れたことがきっかけでした。

信号もコンビニも少ないし、街に賑やかさがあるわけでもない。でも、白嶽(しらたけ)や城山(じょうやま)に登って、浅茅湾(あそうわん)のリアス式の地形を見下ろしたとき、「日本にこんな景色があったのか」と、素直に驚きました。海外の有名な景勝地と比べても引けを取らないくらい、造形として美しい場所だと思いました。

港で揚がる魚介も、地のものの刺身も本当に美味しい。何もないことが、むしろ豊かさとして残っている島だなと。最初は仕事で来ていたはずなのに、いつの間にか「この場所をもっと知りたい」と思うようになっていきました。

2. なぜ「支援」ではなく、「自社で宿をやる」選択をしたのか

このコラムでいちばんお伝えしたいのは、ここからの話です。

実はもともと、シンクロが対馬と関わるきっかけは、宿泊事業ではなくマーケティング支援のお話でした。対馬の方々と一緒に観光のあり方を考えていきたい、そんな構想で現地に足を運び、リサーチを重ね、地元の方々と関係を築いてきました。

ただ、諸事情によりそのプロジェクト自体は別のかたちに進むことになり、最終的に私たちが関わる形にはなりませんでした。

普通であれば、ここでご縁が終わっていたのかもしれません。でも、その間に対馬に通い続け、ガイドの方に山や歴史を案内してもらい、島の方々と話をするうちに、私の中にははっきりとした確信が生まれていました。

「対馬には、本当に価値がある。この価値を、もっと多くの人に届けたい」

支援の案件はなくなりましたが、でも、島の魅力は多くの人に知ってもらいたい。それなら、自分たちで現地に入り、事業をやろうとそう決めたところから、シンクロの宿泊事業「RITO」が始まりました。外から支援するだけでは見えない現地の課題が、絶対にあります。自分たちでリスクを取って運営することで、はじめてマーケティングも地域活性も「実践」として意味を持つ、と私は思っています。

3. 改めて、対馬の魅力について

少し、私が惚れ込んだ対馬の魅力について、お話しさせてください。

私が惚れ込んだ対馬の魅力2

 1つ目は、自然の造形美です。

浅茅湾のリアス式海岸、白嶽、城山(金田城)。私自身、白嶽や城山には何度も登っています。神の山と呼ばれる白嶽は、山頂付近に手を加えることがはばかられ、古くからの信仰がいまも息づいている場所です。龍良山(たてらやま)のように「振り向いてはいけない」という言い伝えが残る場所もあり、自然と歴史が結びついている、そこがこの島の面白さだと、私は感じています。

2つ目は、食材の豊かさ。

私が惚れ込んだ対馬の魅力3
私が惚れ込んだ対馬の魅力4

対馬の海産物は、近隣の離島と比べても最上級に多くの種類が取れる場所です。ウニ以外の寿司のネタが手に入る場所ではないでしょうか。ただ、その食材はほとんどが東京や福岡などの大都市に運ばれており、島内で食べることが難しい現実もあります。

3つ目は、生きものに詳しい人ほど好きになる島だということ。

ツシマヤマネコを見るためだけに毎年通うという方がいたり、ツシマテンや渡り鳥、対馬固有の昆虫を求めて訪れる方もいたり。もちろん、釣りマニアの聖地でもあります。自然に関するマニアックな魅力にも応えられる懐の深さが、この島にはあります。

そして最後は、釜山との近さ。

船で気軽に渡れる「国境の島」というポジションは、日本のなかでもここだけのものです。韓国とセットで旅を組むという、対馬ならではの体験設計も可能になります。

これだけの魅力を持っていながら、対馬は日本国内ではまだまだ広く知られていない島です。「魅力的な場所はたくさんあるのに、知られてない」これが、私たちが宿を営む動機の根底にあります。

多くの方に来ていただくためには、当然ながら泊まる場所が必要になります。対馬にはすでに多くの宿泊施設がありますが、島内に多数ある立派な和風建築の古民家を活かした宿泊施設や、サウナのような付加価値を持った一棟貸しは、まだ数が多くありません。だからこそ、RITOが加わることで、対馬を訪れる選択肢がもうひとつ増やせるのではないかと考えています。

おかげさまで「RITO SAKAPORT」は、高級宿予約サイト「一休.com」にも掲載いただけました。対馬で一休.comに掲載されている宿はまだ2軒で、対馬グランドホテルさんに続き、2軒目として加わらせていただけたことを、私たち自身もありがたく受け止めています。

SAKAPORT近くの美しいビーチ。土曜日なのに貸切!
SAKAPORT近くの美しいビーチ。土曜日なのに貸切!

4. 対馬で暮らす、ということ

2024年12月、私は妻とともに対馬へ移住しました。

それまでは、神奈川と対馬を行き来する生活をしていました。ただ、事業にも地域にも腰を据えて向き合うには、その距離感ではどうしても限界があります。そこで、宿の開業前ではありましたが、早めに移住しよう、と決めました。

家探しから、私たちは島の方々に本当に助けられました。

新しいことを始めようとしている人に対して、対馬の方たちは驚くほどポジティブに協力してくれました。家を探していると伝えると、いろんな方が候補を紹介してくれたり、人と人をつないでくれたり。人口が減っていくなかで、地域として何かしなければという危機感を、皆さんがそれぞれ持っていらっしゃるのだと思います。

移住してからは、漁師さんから釣れた魚を分けていただいたり、ご近所の方が、野菜などお裾分けしてくださったり。最初から島民の皆様の優しさでスムーズに生活に入っていけました。ただ一点、神奈川の温暖な地域から対馬に移住したため、冬の寒さだけは相当堪えました。

もちろん、映画館がないとか、マクドナルドがないとか、ないものを言ってしまえばキリがないですが、不便さを、不便さのまま楽しむ。その土地の時間の流れに身を委ねる。たまに来島するだけでは、得られなかった土地に根を下ろしていく感覚が、少しずつですが、いまの対馬の日常にはあります。

5. 「RITO」というブランドと、3つの宿のかたち

RITOは、対馬を訪れる多様な目的に応えるべく、様々な用途で利用できる施設のブランドとして構想しています。

  • 島アクティビティを楽しむ宿: 「RITO SAKAPORT」(2025年10月開業)
  • 街歩きを楽しむ宿: 「CLIP INN by RITO」(2026年2月開業)
  • 歴史のある対馬を楽しむ宿: 「RITO対馬国(つしまこく)」(準備中)

 

それぞれ、対馬という島の異なる魅力を切り取った設計になっています。順番にご紹介させてください。

「RITO」というブランド1
「RITO」というブランド2

6. 1号店「RITO SAKAPORT」港の前の、秘密基地

2025年10月、対馬の中央部分に位置する峰町佐賀(さか)地区に、1号店「RITO SAKAPORT」をオープンしました。

コンセプトは、「自己流のカスタマイズ旅、対馬で秘密基地滞在」。「都会を離れ、自然と遊ぶ、家族や仲間と過ごす秘密基地」というイメージで設計した一棟貸しの宿です。

島のどのエリアにも行きやすい、中央部分にあります。目の前には港があり、海と山の景色を同時に楽しめる立地。徒歩2分で堤防釣りもできます。建物の中には、

  • 七輪や本格コンロ、製氷機まで備えた、土間リビングキッチン
  • バルコニーに設置した4名様サイズのプライベートサウナ(24時間利用可)
  • 寝室4部屋(最大10名様まで宿泊可能)
  • プロジェクターと大型スクリーンや釣具セット

 

を備えています。

私たちがいちばん想定しているお客さまは、「大人数のファミリー」や「グループ旅」。三世代の家族旅行や、親戚同士の集まり、友人グループでの滞在、ビジネスホテルやリゾートホテルではなかなか難しい「一つ屋根の下で過ごす団らん」の時間を、しっかり受け止められる空間でありたいと考えています。

シンクロのメンバーが合宿で集まったときも、みんなでキッチンに立ち、プロジェクターでスポーツ中継を観ながら七輪を囲んで、サウナで夜更けまで語り合いました。釣り目的や自転車で島を巡るグループ、サウナ目当ての方にもお越しいただいています。

シンクロの合宿での様子

ありがたいことに、休前日の稼働率は80%を超え、AgodaやBooking.comでもお客さまから9.5以上の評価をいただき、想定していた2泊以上でご利用いただくことも多くなっています。私たちが思い描いていた「こういう滞在を求めている方が、確かにいる」ということを、開業半年で実感できました。釜山と組み合わせた体験設計も考えているとお伝えしましたが、実際に東京からのゲストが釜山と福岡からそれぞれ合流して、私たちの施設に宿泊してくれたこともあります。

対馬を訪れる旅行者のなかには、島の大きさ、魅力を理解せず、通り過ぎるだけの滞在で終わってしまう方も少なくありません。でも、本当にこの島を楽しむには、少し腰を据えて、地元の方と交流し、港で揚がった魚を味わい、山に登り、歴史に触れる時間が必要だと、私は感じています。

「RITO」というブランド3

7. 2号店「CLIP INN by RITO」坂の上の、隠れ家

2026年2月、島の中心地である厳原町(いづはらまち)に、2号店「CLIP INN by RITO」をオープンしました。

こちらのコンセプトは、「思わずロングステイしたくなる隠れ家の宿」。厳原の坂の上にあり、対馬の街並みを見渡せるロケーションに、定員6名・1日1組限定の小さな宿として設計しています。

SAKAPORTが「港の前で、自然やアクティビティを思いきり楽しむ秘密基地」だとすれば、CLIP INNは少し趣が違います。徒歩圏内にスーパーや飲食店があり、車がなくても厳原の街を散策できる立地。木々に囲まれた静かな環境は、家族でゆったり過ごすのにも、友人同士で賑やかに過ごすのにも向いています。

プロジェクターとスクリーン、IHコンロ2口の使いやすいキッチン、Wi-Fi、洗濯機、冬期はこたつを設置し、短期の旅行から長めの滞在まで、自分らしく過ごせる設えにしています。
特にこたつは韓国人ゲストから日本的な体験として大変好評です。

おかげさまで平均稼働率も60%超えと、好調なスタートを切らせていただいています。

8. そして3軒目「RITO対馬国」歴史を楽しむ宿として、準備中

RITO対馬国(つしまこく)1
RITO対馬国(つしまこく)2

3軒目となる「RITO対馬国(つしまこく)」は、現在開業に向けて準備中です。

対馬は、古くから日本と大陸を結ぶ要衝として、独自の歴史を積み重ねてきた島です。神話、信仰、貿易、防人(さきもり)など、この島でしか出会えない歴史の厚みを、滞在を通して感じていただける宿にしたいと考えています。こちらの宿は、元寇で対馬が最初に侵攻された場所に近い集落にある、伝統建築の宿です。

3施設体制が整う2026年は、フルタイムスタッフの採用や、食事の提供、韓国の船会社さんとの連携といった取り組みも進めていく予定です。日韓のファミリーが連泊で訪れる拠点として、また、アクティビティを目的に訪れる方々の拠点として、もっと存在感を出していけるはずだと感じています。

9. 開業して、改めて学んだこと

ここまで順調に聞こえる話を続けてきましたが、もちろん壁もたくさんありました。

最大の壁は、人材不足と、施工業者さんが手いっぱいで複数店舗の開業が遅れる、といった対馬ならではの状況でした。

ただ、その苦境こそが、結果的に地域の方々との絆を深める契機になりました。近隣の方にスタッフを紹介していただいたり、滞在中のお客さまへの対応を手伝っていただいたり―地域の支えがいかに大きいかを、開業を通じて何度も痛感しました。

そして、お客さまから高い評価をいただいているのは、サウナやこたつ、土間リビングといったハード面以上に、「人の温もり」「日本的なおもてなし」であるということも、運営してみて改めて分かったことです。

設備をどれだけ整えても、最後に評価を決めるのは「人」です。だからこそ、誰と一緒にこの宿を運営していくか、ということが、私たちにとっていちばん大切なテーマになっています。

結びに

ここまで2軒の宿を立ち上げてみて改めて感じるのは、「自分たちだけでは何もできない」ということです。地域の方々、ガイドさん、漁師さん、宿のお隣さん―対馬で出会ったたくさんの方の支えがあって、いま私たちはこの島で事業をやらせてもらっています。

その感謝を、これからも忘れずに、ひとつずつ取り組みを積み重ねていきたいと思っています。

ぜひ一度、対馬に遊びに来てください。そして、一緒に働きたいという方も、大歓迎です。

対馬で、お待ちしています。

武 茂生
株式会社シンクロ/RITO事業責任者

施設概要

RITO(リト)
長崎県対馬の一棟貸し宿ブランド
公式サイト: https://rito-stay.jp/

 

RITO SAKAPORT(リト サカポート)
「自己流のカスタマイズ旅、対馬で秘密基地滞在」

  • 開業: 2025年10月
  • 所在地: 〒817-1412 長崎県対馬市峰町佐賀17
  • 定員: 最大10名様(寝室4部屋)
  • 設備: プライベートサウナ(バルコニー設置・24時間利用可)、土間リビングキッチン(七輪・本格コンロ、製氷機など)、プロジェクター、大型スクリーン
  • アクセス: 比田勝港から車で約45分/厳原港から車で約60分/対馬空港から車で約40分
  • 公式サイト: https://rito-stay.jp/sakaport/

 

CLIP INN by RITO(クリップイン バイ リト)

「思わずロングステイしたくなる隠れ家の宿」

  • コンセプト: 国境の島の街歩きを楽しむ宿
  • 開業: 2026年2月
  • 所在地: 〒817-0015 長崎県対馬市厳原町西里145-5
  • 定員: 最大6名様(1日1組限定)
  • 設備: プロジェクター・スクリーン、IHコンロ・調理道具一式、Wi-Fi、洗濯機他
  • アクセス: 厳原港から車で約4分/対馬空港から車で約18分/比田勝港から車で約1時間47分(契約駐車場から徒歩約5分)
  • 公式サイト: https://rito-stay.jp/clipinn/

 

RITO対馬国
歴史のある対馬を楽しむ宿(開業準備中)
詳細は公式サイトにて随時お知らせいたします。

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