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売ったあとを設計する。 顧客分析から始める、シンクロの顧客起点のマーケティング

こんにちは。シンクロの久保です。事業主さんの組織の中に入ってマーケティングの戦略立案から実行まで一緒に遂行するコマーケ事業を中心に活動しています。

シンクロには事業をやりながらコマーケ事業に関わったり、僕のようにコマーケ事業を中心に活動しているメンバーがいますが、それぞれ特化スキルを持っているため、マーケティングにおけるアプローチは大きく異なります。

僕はマーケティングに従事して20年近くにはなるので、不得意な分野は特に無いのですが、顧客分析と広告が好きだし得意、という特徴があるため基本的に全てのクライアントにおいて既存顧客の分析から入ります。

顧客分析というと、つい投資額の大きい新規顧客獲得の領域に注目されがちですが、事業全体で考えると既存顧客の分析の方が収益には直結しやすい傾向があります。

先日、ECとリアル店舗の両方のチャネルで商品を販売している、とある事業の購買データを分析しましたので今回はそちらの事例を紹介したいと思います。
使用した分析手法は階段図、デシル分析、RFM分析、ECと店舗のRFMをさらにクロス集計したものです。

初めて買ってくれた人の約7割が、2回目を買っていない。

今回の分析結果で真っ先に見たポイントはF2転換率でしたが、これは決して珍しい数字ではありません。
しかし改めて向き合うと、集客に費やしたコストの大部分が、一度きりの関係で終わっていることを意味します。
裏を返せば、「買ってもらった後」の設計次第で、事業の収益構造は大きく変わり得ます。

3回・6回と買い続けてくれた人たちのデータを見ていくと、離反率がぐっと下がり、買うペースも上がり、1回あたりに使ってくれる金額も増えていく。
そして上位30%のお客さまが、売上全体の約80%を支えていました。

「どんな施策でもっと集客しようか」という議論をする前に、「一度買ってくれた人に、もっと丁寧に向き合うことが事業収益の最大化に繋がる」と、この分析結果からもわかると思います。

「一人のお客さん」を想像してみる

デジタルのマーケティング現場では、どうしても数字や平均値で話すことが多くなります。
「平均購買回数が2.7回」「リピート率が30%」
こうした数字は、全体の傾向をつかむには便利ですが、施策の精度を上げるには限界がありますし、「お客さま」が「数値」に変わってしまっていることがよくあります。

我々シンクロが大切にしているのは「顧客起点」という考え方です。
たとえばECで初めて購入した人が、その後どんな経路で何を2回目に買ったのか。あるいは買わなかったとしたら、どのタイミングで気持ちが離れたのか。
こういったことを「平均値」ではなく実際の「顧客一人」にインタビューを行い、得られた定性情報を分析結果の定量データと合わせてみると、施策の解像度がぐっと上がります。

今回分析した事業のデータを見てみると、初めてECを使うきっかけとして、期間限定のイベント系商品が多い傾向がありました。「普段は店舗で買うけど、このタイミングだけオンラインで」という行動です。そこで終わるか、次もECを使って他の商品も買ってもらえるかは、その後の小さなコミュニケーションで変わります。

チャネルをまたいで「全体」で見る

もうひとつ印象的だったのは、店舗とECの両方を使っているお客さんの存在感です。
人数でいうと全体の2割にも満たないのに、売上の半分以上をそのグループが占めていました。
つまり「オンラインもオフラインも使い倒してくれているお客さま」が、事業全体を下支えしている。
でも、このことに気づけていないと、「EC部門の数字」「店舗部門の数字」をそれぞれ最適化しようとして、どちらにとっても中途半端な体験を提供してしまいます。
広告、CRM、SNS、店頭、それぞれで最適化を追うのは自然な話です。

でも、お客さま側から見れば、どのチャネルで接触しても「同じブランド」に触れています。その目線で全体を設計できているか、というのが「全体最適」の問いです。

今回に関して言えば、「店舗しか使っていないお客さまをECに連れてくる」
ここに大きな成長の可能性を見つけることができました。
感覚的にありそうだな、と思う着地だと思いますが、具体的にここに何人いて、その人たちがECを併用するようになると1人あたりのLTVがいくらになる、というところまで試算できるようになったのは今回の分析によって踏み込めた大きな一歩でした。

「売ったあと」を設計することが、一番の差になる

集客の手法はどんどん進化していて、情報も溢れています。でも正直なところ、「売った後にどう関係を育てるか」を丁寧に設計できている企業は、まだまだ多くありません。

購買回数を重ねるほど離反率が下がり、買う頻度も上がる。これは多くのビジネスに共通する傾向です。だとすれば、力を入れるべきは「もう一度来てもらうための工夫」と言えます。

我々シンクロがクライアントと一緒に考えるのは、「誰に何を伝えて買ってもらうか」だけでなく、「買ってくれたお客さんとの関係を、どう設計するか」という問いです。
「売る」ことに加えて、「売ったあと」を丁寧に設計すること。その積み重ねが、中長期の経営体力につながると考えています。

※本コラムは守秘義務に基づき、具体的な固有名詞・数値等を抽象化した上で作成しています。

久保 隼人
シニアストラテジックディレクター

2008年に新卒で大手Web専業代理店に入社。運用コンサルタントのチームに配属。部長、新規事業立ち上げ、事業部長を経験した後、2019年より専門役員に就任。2021年に退職、株式会社シンクロに入社。

・大手パーソナルトレーニングジムの新規事業立ち上げ時にCMO補佐として検証設計・KPI設計からサービス、ユーザー分析による店舗展開の戦略構築、稼働シミュレーションフレームの作成などに携わる。
・車のサブスクサービスのデジタルマーケ改革にCMO的立ち位置として参画。運用型広告の改善、ナーチャリング・インサイドセールスチームの組成を提案、施策の実行までを担う。2年間で約7億円の広告費削減、1年間で新規利益約8億円を創出、約15億円の利益貢献。
・2022年よりNTTドコモ マーケティング戦略部
マーケティングディレクターを兼任。広告効果の効率化、各代理店との経済条件の調整により初年度から年間約40億円の利益貢献。事業利益に直結するサービス間の横断LTVを新しいKPIとして設計し、実装。

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