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「サッカークラブの未来を共に創る —— 鎌倉インテルのオーナーという選択」鎌倉インターナショナルFCオーナー 四方 健太郎 × 西井 敏恭

シンクロ代表・西井敏恭は、多くの顔を持つ経営者として知られていますが、その中でも特に異彩を放つ「サッカークラブのオーナー」という一面をご存知でしょうか。西井が「どれだけでも時間を費やしたいほど大切なもの」と語るクラブオーナーの魅力とは…?
今回は、鎌倉インターナショナルFC(以降「鎌倉インテル」)のメインオーナーである四方健太郎(よも けんたろう)氏をお迎えし、その実態について掘り下げていきます。

左から:西井、橋本英郎さん、四方さん 撮影:Kazuki Okamoto(ONELIFE)

サッカークラブの経営事情とは

——本日は、お二人からサッカークラブのオーナーの魅力についてお伺いしていこうと思います。
早速ですが、鎌倉インテルが最近、1億円のクラウドファンディングを成功させたそうですね?

四方 はい、3年前にゼロから作り上げたホームグラウンド「みんなの鳩サブレースタジアム」が、11月24日に終了します。
それに伴い、新たなグラウンドを設立するために約3億円が必要だったのですが、あらゆる手を尽くしても1億円足りず、その資金をクラウドファンディングで募ることにしました。
つい最近まで、現場では「全然大丈夫!」と言いながら計画を進めつつ、クラウドファンディングでは「お金が足りませんー!」と本音を漏らすという、かなり両極端な状況でした(笑)
おかげさまで目標の1億円を達成でき、ホッとしていますが、まだスポンサー営業などやることは山積みです。スタートアップあるあるかもしれませんが、まさに自転車操業のクラブですね。

西井 前回「鳩スタ(みんなの鳩サブレースタジアム)」を作った時も、同じような感じでした(笑)
彼と何度もミーティングして止めようとしたのですが、「グラウンドがないと鎌倉にチームがある意味がない!」の一点張りで。
「でも事業計画すら見えないものに、億を越える資金を全て突っ込むの?
というかまず、そんなお金ないじゃん」って(笑)
シンクロでは、ぼくが止める役をするなんて絶対にありえないんですけどね。

四方 今、話しながら自分でもおかしいなと思います(笑)

——いきなりスケールの大きな話ですね…。そもそもグラウンドを作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

四方 鎌倉市というホームタウンに拠点がないと、良い選手もファンも集まらないんですよ。
クラブ設立当初は横浜で練習や試合をおこなっていましたが、それでは「鎌倉インテル」の意味がないので、当然ファンもサポーターもつきませんでした。
だからこそ拠点を作り、コミュニティを醸成する必要があると考えました。
実際にグラウンドができると、少しずつ人が集まり、コミュニティが形成され、ファン同士も挨拶を交わすようになりました。そういう活動が今回のクラウドファンディング成功にも繋がったのだと思います。
ただ一番の問題は、やはり資金がなかったことですね。先ほど「自転車操業」と言いましたが、あの頃は自転車すらなかった、と言えるかもしれません(笑)

西井 確かにあの時鳩スタを作っていなければ、今の鎌倉インテルは存在しなかったでしょうね。結果として彼の判断は正しかったと思います。
それにしても全く見通しがないのに「グラウンドを作ろう!」というのは、あまりにも想定外ですよ。それはJ1のチームや大企業が10年かけてやることです(笑)

——でも最終的には、西井さんも賛同されたんですよね?

西井 そうですね、ヨモケンの熱量がとにかくすごいんですよ(笑)
それでようやくこので3年間を走り切ったと思ったら、「今度はもっと良いグラウンドを作ろう!」って言い出して。免疫ができていたせいか、今回はもう反対していません(笑)
どんな大きな壁でも、一度乗り越えると人は強くなるものですね。

地域の人が集まるコミュニティとなったスタジアム 撮影:Kazuki Okamoto(ONELIFE)

オーナーになった理由は「夢」と「楽しそう」

——以前の四方さんのインタビュー記事で、鎌倉インテルを立ち上げた経緯が紹介されていますが(参考:「サッカーファンがサッカークラブのオーナーになったら」https://thinqlo.co.jp/column/12318/)、西井さんがオーナーになった経緯も伺ってよろしいでしょうか?

西井 ヨモケンから「先立つものがないから助けてほしい」と相談されたのがきっかけです(笑)

——ずっと同じ悩みですね(笑)

西井 そう、何度もその話はしてきましたよって(笑)
でも、クラブ設立から1年が経ち、選手も増えて「熱くていいチームになりそうだな。大変そうだけど楽しそう。」と思い、オーナーになることにしました。
そこからは、ぼくの専門が活かされる経営戦略に関わるようになり、インターネットを使って全国のファンやサポーターと繋がるための施策を考えたりしています。

——なるほど。でも「楽しそう」とは意外な言葉です。

西井 そうですか?このクラブ運営に関して、ヨモケンはすごくドリーマーで、いつも真剣にとんでもないことを提案してくるんですよ。それこそお金がないのにグラウンドを作ろうとするとかね。
それをぼくがアイデア化し、実行手段まで落とし込むプロセスは毎回新鮮で楽しいんですよ。
それに、彼のすごいところはぼくが提案したことを必ず実行までやり遂げることですね。

——それは意外となかなかできないことだと思います。

西井 そうですよね。例えば、鎌倉インテルではほぼ毎試合ライブ配信をおこなっていますが、手間とかを考えると案外続けられることじゃない。でもこういう地道な努力ができているから、鎌倉に住んでない選手の家族や友達を含めて、インターネットを通じて世界中から応援される環境を作れているんです。こうした積み重ねがクラウドファンディング成功の要因ですね。
今では、ぼくのアイディアを実現させる運営チームが出来ていて、初期のコンセプトからもどんどんアップデートして、Web3まで昇華させてきていますからね。

四方 ぼくにとって西井さんは、駆け込み寺のような存在ですから。

西井 そう、だからあんまり来ない方が安心です(笑)
でも実際、ぼくも「いつかサッカークラブのオーナーになりたい」っていう夢を持っていたんですよ。“サッカー好きの男の子の夢”というんですかね。
一人だとその夢を叶えられるなんて思いもしなかったけど、ヨモケンの明確なビジョンと実行力のおかげで、今でも夢を見ていられるので、そういう意味でもオーナーになって良かったです。

「いつかサッカークラブのオーナーに」という夢が叶う 撮影:Kazuki Okamoto(ONELIFE)

ここは情熱に薪をくべる場所

——鎌倉インテルのオーナーになったことで、経営者としてのビジネスにも影響がありましたか?

西井 まず「サッカークラブのオーナー」という肩書がとてもキャッチーで、多くの人に興味を持ってもらえる点ですね。
時々、鎌倉インテルに話が盛り上がりすぎて、仕事の話にならないこともがありますが(笑)
それでも確実に印象には残るし、もっと言うとぼくだけでなく、ぼくの会社にも好印象を与えています。
「シンクロはベンチャー企業ながら、サッカークラブを保有して地域貢献にも積極的な会社」というブランドイメージに繋がっています。

——それはインパクトが大きいですね。

西井 そうですよね。それに鎌倉インテルの経営戦略と、スタートアップ企業の経営戦略は、意外と親和性が高いんですよ。
だから「小資本から経営を成り立たせるチーム」という良い事例になっています。

四方 正真正銘「ゼロ」から始めていますから、かなりの説得力ですよね。

西井 スポーツは究極のファンマーケティングだと思うので、その点を徹底しています。
ついさっきも他の経営者から「鎌倉インテルってデザインとかもカッコいいし、すごい勢いがありますよね!」って言われたんですよ。
でも実際、デザインのほとんどが内製で、広告にも大きなお金はかけていません。
その代わり、ファンやサポーターとのコミュニケーションを大切にし、推し活ブームにもうまく乗りながら、ブランド価値を高めています。
こういう部分も含めて「お金がなくてもここまでできる」という事例になると思いますね。

四方 ブランド価値といえば、オーナーになったことで、これまで会えなかった人と会えるようになりましたね。政治家さんや地元大手企業の社長さんなどとお会いする機会も増えました。

西井 あとは元日本代表監督の岡田武史さんとか、ガンバ大阪などで活躍した橋本英郎さんとかね。もう自分でも意味がわからないです(笑)
でも、今まで出会えなかったような人たちと話すことで、新しい刺激が生まれていることは確かですね。

——特に鎌倉インテルは地域に根付いているからこそ、行政やファンとの繋がりが強いのですね。四方さんがスタジアム建設にこだわった理由がよくわかりました。

四方 そのスタジアムも3年でお引越しするんですけどね(笑)

西井 本当に意味わかんないですよね(笑)
正直、ぼくはシンクロでは新しいことをどんどん進める方なのに、そんなぼくが止める役になるぐらい、彼は暴走し続けているんですよ。
でも結局、一番大事なのは「何かを成し遂げたい」という圧倒的な熱量で、どんなビジネスモデルもテクニックも、その熱量には勝てないと思うんです。
少し話は変わりますが、ぼくの場合、週に何十件もミーティングがあるので、大変だし面倒くさいと思うこともあるのですが、ヨモケンとの熱量のあるミーティングなら「いくらでも時間を注ぎたい」と思えます。
それはぼく自身が、次から次へと薪をくべられて「よし!もっと面白い事業にチャレンジしよう!」と思えるからで、例え多少疲れていてもここに来れば必ず超回復するんですよね。
ぼくにとって鎌倉インテルは、常にモチベーションを整えてくれる大事な存在です。

撮影:Kazuki Okamoto(ONELIFE)

最後まで読んでくれたあなたに

——最後に鎌倉インテルの展望について教えてください。

四方 そうですね。鎌倉インテルの活動を通じて「やりたいことをやり切る楽しさ」を伝えていきたいと思っています。
ぼく自身がサッカーを通して多くの人と繋がることができたように、鎌倉インテルが誰かの良い繋がりを作れるクラブにしていきたいですね。

西井 チームも少しずつ昇格し、規模も影響力も大きくなってきているので、経営チームに参画してくれる協力者を増やしたいと思っています。
ぼくと同じように、他の仕事をしながら専門分野を活かして協力してくれる「共同オーナー」を想定しています。
単純に、ヨモケンが率いるこのクラブの熱量をもっといろんな人と楽しみたいし、さらに薪をくべ合いたいんですよね(笑)
ということで、そろそろ良いと思う人には声をかけていこうと思っています。
もしかしたら、今これを読んでいるあなたにも声がかかるかもしれません。
その時はラッキーだと思ってください(笑)

ちなみに「どうしても協力したい!」という人は連絡をください。
こちらで検討の上、後日連絡をする…かもしれません。

四方 ちょっと上から目線ですね、さすがオーナー(笑)

インタビューの間も、ずっと楽しそうに鎌倉インテルの話をするお二人。
本編では西井氏が「(ヨモケンから連絡が)来ない方が良い」と言っていた一方で、土日の朝や移動中でも好きあらば打ち合わせをしているらしく、お二人の関係性を垣間見ることができました。
これから協力者を増やして、さらに加速する鎌倉インテルの活躍に期待すると同時に、四方さんの大胆なアイディアがどんどん具現化されていく様子を楽しみにしていきたいと思います。

(writer:越野和馬)

【プロフィール】

四方 健太郎
鎌倉インターナショナルFC オーナー

立教大学経済学部を卒業後、アクセンチュア株式会社の東京事務所にて、主に通信・ハイテク産業の業務改革・ITシステム構築に従事。2006年より中国(大連・上海)に業務拠点を移し、大中華圏の日系企業に対するコンサルティング業務にあたる。
独立後、1年かけてW杯2010年大会に出場する32カ国を巡る『世界一蹴の旅』を遂行し、同名著書を上梓。(あわせて、経済界社より『世界はジャパンをどう見たか?』を上梓。)
現在、東南アジアや南アジアなどでグローバル人材育成のための海外研修事業などを行う企業数社を経営。シンガポール在住で日本とアジア諸国をフィールドにしている。
鎌倉インターナショナルFC ウェブサイト

西井 敏恭
鎌倉インターナショナルFC 取締役CDO(チーフデジタルオフィサー)

2001年から世界一周の旅に出る。2年半にわたる世界一周の旅行記を更新したWebサイトが人気となり、帰国後、旅の本を出版、EC企業にてデジタルマーケティングに取り組む。
2014年に二度目の世界一周の旅をしたのち、2016年にシンクロを設立。大手通販・スタートアップなど多くの企業のマーケティング支援やデジタル事業の協業・推進を行う。
シンクロ代表のほか、株式会社グロースX 取締役CMO、オイシックス・ラ・大地株式会社CMT、株式会社FABRIC TOKYO 社外取締役、株式会社NTTドコモ マーケティング戦略部 サービスマーケティング室 シニアマーケティングディレクターを兼任する。

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