“経営とマーケティング支援”を主な事業とする株式会社シンクロ。しかし取り組みを詳しく見ていくと、旅グッズの開発・販売、NPO支援、さらにサッカーチームの経営まで行う幅広さ。いったい、シンクロってどんな会社なのでしょうか?まずは代表取締役社長・西井敏恭氏に話を聞いてみました。
Column
コラム
“シンクロを知る”シリーズ 代表・西井敏恭「旅に出なけりゃ、わからない」
インタビューシリーズ「シンクロを知る」
企業理念は、旅から生まれた
—— はじめまして。わたしはライターとして、シンクロさんのコンテンツの一部をお手伝いさせていただいているのですが、禅や漁業、サッカークラブについての取り組みなどおうかがいするうち、「株式会社シンクロ」は、そもそも何を事業としている企業なのか……について疑問や知りたい気持ちが膨らんできました。今日は、いろいろとうかがわせてください!よろしくお願いします。
西井:
なるほど、こちらこそよろしくお願いします。
—— それにしても事業内容がとても幅広いですよね。
西井:
幅が広いというのか……最近では専ら「漁業の会社」だと思われてますからね(笑)
—— ニュースの記事などでも拝見しました(笑)。企業理念の「マーケティングとテクノロジーを使って、かっこいい世界を作る」というのは、起業当初からの西井さんの想いですか?
西井:
いや……当時は「とりあえず、起業したことないから、起業しよう」というのがぼくの想いでしたね。
—— まずは「起業」への挑戦が目的だったんですね。
西井:
そうなんです。ただ起業するって言ってもどうしていいかわからないじゃないですか。それで旅行に行くことにしたんです。
—— どなたかに会いに……?
西井:
いや昔、2年半くらい海外をずっと貧乏旅行してたんですよ。もう少しお金ができたので、普通に「行きたかったけど、お金がなくて行けなかったところ」に行ってみたいなと思って。
—— ……起業をするためですか?
西井:
いや……、旅行ですね。
—— あれ。
旅が気づかせてくれたこと
—— 旅行中に、何か大きなプランを練られたりされていた?
西井:
いえ、行ってるうちに、特に興味も持っていなかったアフリカとか南米にまで行っちゃったりして。その最中は、Facebookに写真を投稿してましたね。
—— 旅行の写真をですか?
西井:
そうですね。「いいね」がいっぱい付きました。
—— ……旅行の写真は「いいね」が付きやすいですもんね。
西井:
そうなんですよ。最初の1〜2ヶ月は「ああ、旅行行ってるんだな」ってみんな思うんですよね。それでも半年ぐらい投稿し続けてると、さすがに「あ、こいつ暇なんだな」ってバレはじめるわけですよ。それで20社ほどスカウトをいただいたりして。
—— ……なんと!
西井:
それで、旅をしながらリモートでマーケティングのコンサルのような仕事をやってたんです。ただそのとき、どこの会社も同じことを言ってたんですね。「デジタルマーケティングちゃんとやりたい」って。結果的に、そこにニーズがあるんだなということで、日本に帰ってきて、マーケティング支援の会社を仲間と立ち上げました。
—— 旅行に、すごく意味があったんですね!よかったです。
西井:
めちゃくちゃ意味がありましたね。その後、ぼくは旅に出かける以前もずっと事業会社にいた人間だったこともあって、やっぱり「事業を作りたい」という気持ちが大きくなって、今のシンクロという会社を新たに作りました。それで、企業理念を作る必要があったので、がんばって書いてみたのが「マーケティングとテクノロジーを使って、かっこいい世界を作る」っていうことですね。
—— おお、そういうことだったんですね。なんだか旅のような道のりでした。
翌日から出社してくれるメンバーを集める
—— シンクロの起業時点では、西井さんおひとりだったんでしょうか。
西井:
そうですね。ただ、ちょうどそのタイミングでぼくの旅仲間が日本に帰ってきたんですよ。その彼とはイースター島で出会ったんですけど、たまたまドミトリーのベッドの上下に泊まっていて。で、一緒に星を見に行ったり、写真を撮りに行ったりして。そこから一緒に海外によく旅に出かけてたんですが、彼が世界一周から帰ってきたので「会おうよ」ということで会ったんです。そうしたら「花屋になろうかな」って言うもんだから、「花屋もいいけど、花屋ぐらいおもしろい仕事あるからうちにおいでよ」って口説いたら、次の日から来てくれて。それが、いま『InTrip』の取締役もやってる松谷ですね。
—— ずいぶん……場当たり的なお話が続きますね。
西井:
このあとも、ずっと場当たり的な話が続きますよ。
—— 失礼しました。
西井:
今一緒に働いてるのはみんな旅で出会った仲間なんですよね。だから、ぼくの旅行は採用活動でもある、という。なにせ、“Be a backpacker.”というのを掲げている会社なので、仕方ないんですよね。旅も仕事のうちなんです。
—— 仕方がない……ずいぶん楽しそうですが、それもお仕事なんですね。
事業のきっかけは「人との出会い」
—— そうやってメンバーを増やされていく中で、この数々の事業はどのように立ち上げられていったんでしょうか?なにか大きな戦略やロードマップがあったりしますか?
西井:
まったくないです。
—— そうですよね。
西井:
そうなんです。基本的に、事業のきっかけは完全に「人」なんですよね。これもやっぱり旅で、ぼくが行った先でいろんな人と出会って、その人が悩んだり困ったりしてることを聞いたときに、「じゃあマーケティングで協力できることは何だろう」ということを考えてみるんです。そこに当然、自分や会社のメンバーが楽しく向き合えることなのか、世の中の役に立つのか、という考えは加わりますけど、そこから生まれた事業ばっかりなんですよね。だから、判断軸という意味では「人」ですね。
—— 旅で出会われた「人」の課題を一緒に考えるうち事業が生まれる、ということなんですね。
西井:
そう、まさに「人軸」ですね。たとえばぼくは、めちゃくちゃ寿司が好きなんですよ。他の贅沢にはまったく興味がないんですけど、とにかく寿司だけは食べまくっていて、寿司を食べすぎて、日本で屈指の寿司職人さんとかとも仲が良くなってしまって。そうすると、超一流の職人さんはみんな同じことを仰るわけですよ。魚の乱獲問題で、いずれいい魚が本当に海からいなくなってしまう、ということを。だけど、対馬に出かけたときに出会った漁師さんは、これからの海を守るような素晴らしい方法で漁業をされていて。
—— それが、現在の対馬の漁業のお仕事にもつながるわけですね。
西井:
つまり、「寿司軸」でもあるわけですね。
—— いや、漁師さんという「人軸」では……
西井:
まあ、そうとも言えるかもしれません。
あと禅事業も旅で出会った仲間と立ち上げたのですが、こちらは「坊主軸」ですかね?
—— いや、それも和尚さんという「人軸」ですね。
西井:
なるほど。全部「人軸」だったんですね。
「チームビルディング」は旅でできる。
—— 細かなロードマップもなく、リモート業務を採用しているとなると、各メンバーのマネジメント面は大変だったりしませんか?
西井:
マネジメントは……基本しないことにしてるんですよね。
—— しないことにしている。それは現場やどなたかに一任しているわけではなく「会社全体で」ということでしょうか?
西井:
そうですね。細かい管理みたいなものは必要ないのかな、と思っていて。その分、ぼくはメンバーと旅で出会って、今でもよく一緒に旅に出かけてるので。そういうタインミングでたっぷりと話す時間はありますし、その旅がマネジメントになってるのかもしれないですね。ぼく以外とも彼らはみんなとにかくたくさんの旅に出かけてますし、いろんな知識が増えていて。そういうことをおしえてもらうこともありますね。だからオフィスで会うことはほとんどありませんけど、コミュニケーションが取れていないってことはないと思うんですよ。
—— そこでもやっぱり「旅」が活用されているんですね。
西井:旅みたいに長い時間一緒に過ごすと、考えてることや今の状況はだいたいお互い語り合うものですからね。
自分の喜びのために
—— 今後、これは成し遂げたい、チームで達成したい、といった目標はありますか?
西井:
それが、それもまったくないんですよね。
—— では……、メンバーのみなさんに成し遂げて欲しいことはありますか?
西井:
基本的に、ぼくは「会社のためじゃなく、自分のために働いてほしい」という話をしてるんですよ。これだけ伝えると少し語弊があるかもしれませんが、組織っていうのもぼくはマーケティングで成り立つものだと考えてるんですよね。マーケティングって何かというと、簡単に言えば、喜んで欲しい人に喜んでもらうことだと思うんです。組織や仕事も同じで、とにかく楽しんで仕事と向き合ってもらえていて、この会社が好きで、この会社の仲間が好きで働いてくれているのであれば、細かなマネジメントや進捗管理なんてしなくてもサボったりおかしなことをするメンバーは出てこないと思うんです。ぼくはメンバーには喜んでもらいたいし、自分のために喜んで楽しく働いてもらえれば。「会社の数字のために」なんて働き方は求めていないですね。
—— そういう意味で、自分を喜ばせるために働いてほしいということなんですね。
西井:
それに深い部分であまりブレないだろうな、という安心感があるのは、これもやっぱりメンバーと一緒に旅をしてきてるからなんですよね。長い時間一緒に過ごしてたくさんのことを一緒に乗り越えながら話をしてきてるし、たとえば事前にめちゃくちゃガイドブック読み込んで「ここへ行こう!」って観光地を旅するような人は、きっとうちのメンバーにはいないと思うんです。その辺にいる人に「あそこの湖がきれいだよ」って言われれば、「面白そうだから、行ってみるかあ」ってなんとなくバスに2日間乗れるような人ばっかりが集まってるわけですよ(笑)。そんな感じなので、どんな体験も直感も大事にできて、糧にしたりきっかけにして面白いことを一緒にやっていける仲間がそろっていると思うので。そこに何も心配はないですね。不安はゼロなんです。
—— 西井さんの価値観や、いちばん大切にされていることは非常によくわかりました。事業全体について、となると、他にどのような方にお話をうかがっていけばいいでしょうか。
西井:
まずは、津下本(グロース X代表)とかに話を聞いていくのがいいかな。順に巡っていくというのはどうでしょうか!
—— では、これから順にいろんな方にお話をうかがっていこうと思いますが、きっとこの考え方が根底でつながる大切なベースとなるのでしょうね。お話どうもありがとうございました!
冒頭こそ、どうなることかと思いましたが、西井さんの傍にあるのはいつも「旅」と人への「信頼」であるということが、言葉の端々からも伝わるお話でした。
今後、それぞれの事業長に話を聞くことで、さらに詳しく「シンクロ」を知ることができるでしょうか。次回の取材もたのしみにしています。
(writer:中前結花)
インタビュー「シンクロを知る」シリーズ
vol.1 代表・西井敏恭「旅に出なけりゃ、わからない」
vol.2 株式会社グロースX代表・津下本 耕太郎「“自由と自律”でとことん楽しむ」
vol.3 鎌倉インテル オーナー 四方健太郎氏「サッカーファンがサッカークラブのオーナーになったら」
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